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インタビュー
2023.06.01

TikTok は地方自治体を救うPR ツールになる──福岡市観光局×明石ガクト対談

「地方創生」の動きが活発になってきた昨今。とくにコロナ禍に突入した2020年以降は、外出自粛の影響を鑑みて、SNS を利用したPR を行う企業や自治体が増えました。その中でも「TikTok」は、Z世代のユーザーが主流ということもあり、これまで届いていなかった若年層へアプローチしようと、大きな注目が集まっています。
今回取り上げる、福岡市もまたTikTok でPR を図った自治体のひとつ。暮らしの中で身近にアートに触れる機会を増やし、アーティストの成長支援に取り組む18日間の『FaN(=Fukuoka Art Next)Week』を広めるべく、ワンメディアとタッグを組み、「TikTok 施策」を実施。その経緯について、福岡市経済観光文化局 観光コンベンション部 観光マーケティング課の野田 優さんと弊社代表・明石が対談しました。

“爆速”でPR動画が完成


明石
そもそもなんですが、僕は福岡市のアンバサダーだと勝手に思っていて(笑)用もないのに、年間14回は訪れるぐらい好きな街なんです。

野田さん
ありがとうございます(笑)ガクトさんが福岡市がお好きだという話は、耳にしておりました。

明石
そんな福岡市さんと、当社が共同で取り組むことができているってことが嬉しいんですが、最初は2021年末ですかね?「福岡でこういう楽しみ方をしたらいいよ」というメッセージを込めたサイネージ動画を作って、福岡市美術館やソラリアビジョン(注:福岡市を代表する待ち合わせ場所)などのスポットに映し出す。そんな大規模なことをやってたんですけど、今回は「市のTikTok 動画をプロデュース」。すごい踏み切ったなって思ったんですよ(笑)

野田さん
恥ずかしながら、それまでTikTok をダウンロードしていなかったんですが、今回の「FaNWeek」には、“アート好き”  だけじゃなくて、“アート未体験” のような若い人たちにもぜひ足を運んでもらいたいといったところで、やはりTikTok が一番届くんじゃないかと考えたんです。実際に明石さんたちから施策を提案いただいて、各方面と調整し「実現できる」ということになり、今回決断しました。

明石
ずっと若者の話題の中心にTikTok があるっていうのは、動画の会社をやっていて身に染みてわかっていたことでして。アラフォーぐらいの世代だと、Google Map でしらべたり、「食べログ」みたいなサービスでスポットを探したりする。でも若い人は、Instagram とかTikTok とか、「ビジュアル」のパワーでどこに行くか決める、という意味では、TikTok で“お出かけ動画” みたいなものを作れば、「わあ、ここ行ってみたい!」と、直感的に心を動かせると思ったんですよね。

野田さん
今回、ぴと@旅行WEBライター✈️さんという、TikTok 10万フォロワー(当時)という影響力のある方に協力いただいたことで、これまで届いていなかった層にうまくリーチできたんじゃないかと。実際この動画で、FaNWeek の情報や、福岡市の魅力をを知ることができたという声も届いています。

ー 実際にぴとさんに制作いただいたFaNWeek のPR 動画がこちら


明石
ぴとさん自体、情報の整理が非常に上手なクリエイターさんで、もともとウェブライターをやってらっしゃたんですね。そういう経験があったから、「この場所はこういうトピックで、こういう風に紹介したらいいんじゃないか」と端的に作ることができたんだと思います。そういう人を、こちらから候補として出せたのは良かったなって思ってます。自慢みたいで申し訳ないんですが(笑)

野田さん
いえいえ(笑)おっしゃる通り、撮影中の機転の速さとか、留意すべき点みたいなところも汲み取ってくださいましたし、アートのことで学芸委員の方に丁寧に話を聞いていましたし、プロ意識みたいなものをすごく感じました。

明石
で、スケジュールの話に触れるんですけど、お出かけ動画の性質上、イベントが始まらないと動画が撮れないじゃないですか。イベント自体は18日で終わっちゃうから、“なる早” で完成させないといけない。初日にぴとさんに来てもらって、投稿まで5日間と、急ぎでやる必要があったんですよね?

野田さん
爆速でお願いさせていただきました。今回の作業日数は普通じゃないんだなっていうことを実感しながら、頭下げて「申し訳ない」と(笑)その中でも、我々が求める以上のものができたとは思ってます。

明石
もちろん、こういった施策をするのに決裁が下りなきゃいかないと思うんですけど、いわゆる一般の企業でも、課長に出して、その後部長に出して…と、結構大変だと思うんですよ。行政であればなおさらなのでは。

野田さん
もちろんそのプロセスはあったんですが、「まだやったことがない情報発信が主流になってきている」「TikTok が若者に刺さる」というのを、すでに上席が理解していたので、ストレスなく進んでいきましたね。

結果は「保存」と「シェア」が普段の倍以上

明石
そう考えると、福岡市さんは先進的な取り組みをする自治体の急先鋒だと思うんですよね。野田さんも「九州Walker 」のYouTube ライブ配信に登場してましたし。

野田さん
そうなんです。いろいろなアプローチ方法でプロモーションしていかないといけないっていうときに、ちょうどお声がけいただきまして。ただ、生配信だったっていうことはあとから聞いたので、当日めちゃくちゃ緊張しちゃって、何喋ってるか全然覚えてないです(笑)

明石
もうね、サムネから伝わってくる表情の硬さがいい。

野田さん
ガチガチでしたね。実はこのカメラの奥には、職員が何人もいて、「変なこと言うんじゃないぞ」という目線を感じてましたね(笑)


ー 野田さんがご出演した動画

明石
そうした様々な取り組みをやる中で、とくにTikTok の施策はFaNWeek にどんな効果を与えましたか?

野田さん
まず、FaNWeek の特設サイトへの流入数が7,700PV ぐらい。これまでと比べて、かなり効果の高い数字だったと感じています。うまくこのイベントにTikTok がハマってくれたなと。

明石
TikTok のほうでも、再生数300万回、エンゲージメント数2万7,000件と、ともに高い成果で、とくに「保存」と「シェア」がすごかった。その辺って数字は出にくくて、要は動画を見て「通りすぎていく」人が大半なんです。ぴとさんの直近10投稿を見ても、平均シェアが90なのに対し、今回が「915」、保存が380なのに対し「724」。何倍にもなっている。本当に相性が良かったんだなと思いますね。

野田さん
取材した美術館など、関係各所からの反応もよかったです。彼女の目線を通して切り取ることで、スポットの良さを引き出せたと。

明石
福岡市のコンテンツもそもそも強いですよね。これを読んでる人は、来年もやるとのことなのでぜひ訪れてほしい。僕はこれまで「夜の観光」ばかりだったけど(笑)昼間にこれ行って、夜にそのまま飲みに行くコースが最高なんじゃないかと思いましたね。

野田さん
我々も、ぜひ「昼の良さ」を推していきたいんです。ナイトコンテンツは、屋台とかいろいろあって充実してるので、今回のようなスポット、グルメ、アートなどをプッシュしていければなと。

明石
僕がめっちゃいいなと思ったのは、大濠公園。意外と行かない人多いんですが、景色も綺麗だしアヒルボートもあるし、大濠にあるスターバックスコーヒーが日本で1番いいとか、いろいろトピックスがありましたね。いっぱい寺社仏閣もあって…あと、街を回っているときに、競艇場のところで若い女性2人組がセルフィーで撮影してて。福岡競艇場って中心街から外れた場所にあるじゃないですか。そこにわざわざ来てるのは、もしかしたらTikTok 見て来たのかなって思っちゃったんですが。

野田さん
本当にそうだと思います。動画を見て「あ、映えるスポットだから行ってみよう」みたいな考えになったのかなと。行政が担当していたら、ここを実際に巡るという視点はなかったでしょうね。ぴとさんの動画は、福岡市美術館の入口サイネージでも見せていたので、より多くの人に “可視化” できていたというのもあると思います。今回成果として、かなりいい数字が出たというところで、すでに内部では「これからはクリエイター発信の方向にシフトしていく必要があるね」と、話しているところです。

福岡は東京に次ぐ「SNS クリエイターの街」

明石
それは喜ばしいですね。福岡って、東京の次ぐらいにSNS クリエイターが多いんじゃないかなっていう印象で、いま円安で海外に行けない人が多いから、国内旅行を盛り上げる意味でも、地元のクリエイターを巻き込んで発信していくチャンスなんです。地元の人っていうので、やる意味合いも強くなるし。

野田さん
たしかに福岡にはクリエイターが多いですね。理由としては、おそらく女性人口比率が高いからだと思います。そのぶん、トレンドのアンテナが高く、有名なところでいうと、「ゆうこす」さんがそう。それに続けとばかり、SNSを活用する人が増えてくる。

明石
ゆうこすさんは、福岡市長選選挙のキャンペーン動画にも出てるぐらい地元で知名度高いですよね。

実は当社では、お隣の佐賀県のTikTok アカウントのアドバイザーもしていまして、九州全県制覇に向けて頑張って行こうかなとは思っているんですが、今回のぴとさんの例のように、UGC(Uger Generated Contents)でエンゲージメント数が高くなるっていうのは、一つのロールモデルになりましたね。ちなみに佐賀県さんに提案したのは、「#佐賀弁」が合計1,600万回ぐらい再生されているということ。「#博多弁」にいたっては3億回再生です(2023年11月30日時点)

野田さん
福岡に住んでる人からしたら当たり前なんですが、全国の人からしたら新鮮なんで再生数も多いんでしょうね。女性が使う博多弁はとくに刺さるようで…そこはもうガクトさんご存知かもしれないですが(笑)

明石
「すいとーと(好きだよ)」とか言われると、もう「おお…!」となります(笑)今後、福岡市ではTikTok をどう活用していきたいとお考えですか?

野田さん
今年(2022年)の動画のテーマでもお願いしていた「サステナブルツーリズム(=地域の文化や自然環境に配慮し、観光地の本来の姿を持続的に保つことができるような取り組みや旅行)」をうまく伝えられるようにしたいですね。言葉だけ聞いても難しいものを、噛み砕いて伝えられるのが動画のメリットなので。あとは来年、世界水泳があって、海外から来る方向けに、観光名所を発信できたらなと。クリエイターの方にも声をかけたいですし、ワンメディアさんにもご協力していただけたらと。

明石
もちろんです。それまで我々も頑張っていきたいと思います。最後に、他の自治体に、TikTok を使ったプロモーションをオススメするなら、どういう言い方になりますか。

野田さん
「柔軟さ」があると言いたいですね。多くの自治体は、オウンドメディアをやってると思うんですが、それだと一面しか魅力を伝えられません。「旅行したいと思わせる」には、TikTok の動画コンテンツプラス、クリエイターさんたちによる “魅せる編集” を使うことが近道なのかなと。もちろんオウンドTikTok でもその可能性があるので、選択肢も幅広いと…。

明石
なるほど。クリエイターさんの目線を通して、これまで自治体の中だと気づかなかったようなところを含めて、コミュニケーションしていけるみたいな、そんな感じですかね。

野田さん
まさにその通りです。言っていただいてありがとうございます(笑)

明石
とにかく、FaNWeek は動画で見たまんまの楽しさがあるので、みんなに足を運んでほしいなと強く思っています。

野田さん
そのためにも、来年(2023年)は今年(2022年)以上のことができるよう、今から準備していきたいですね。

明石
じゃあ、僕は今から宿をとって、来年に備えておきます(笑)

PROFILE

福岡市経済観光文化局 観光コンベンション部
観光マーケティング課
野田 優




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